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人に対する化学物質の安全性を評価するときには、実験動物を用いて行った試験データが使われます。「動物実験の結果 を人にあてはめるのは無理がある」という人もいますが、倫理上、人体実験をすることはまず不可能です。とはいっても、人と動物のあいだには、どうしても超えられない「種の違い(種差)」という壁がありますから、動物実験で得られたデータをそのまま人にあてはめるわけにはいきません。
そこで、動物になんらの毒性変化も認められなかった投与量の上限、すなわち無毒性量(NOAEL:No Observed Adverse Effect Level)に、十分な安全性を勘案して、人間の一日摂取許容量(ADI)を算出します。ADIは人間が、「一生涯にわたって毎日食べ続けても何ら影響を受けないと判断される量」として、体重1kg当たりのmg数で表されます。
通常、ADIを算出する場合は、実験動物と人間のあいだの感受性の違い(種差)による安全性を10倍、さらに人間の性別、年齢、健康状態などの違い(個人差)による安全性を10倍と見込んで、合わせて100倍の安全係数が採用されています。したがって、ADIは、無毒性量の100分の1というになります。
ADI=無毒性量×1/100
しかし、安全係数は、もともと明確な理論的根拠を基に算出されたものではありません。永年の経験的・実証的な毒性学的知見から判断して、一般的に100倍の安全係数を使用することにより、十分な安全性を確保できるとみなされています。けれども、これは決して固定的なものではなく、最新の試験データが不足しているとか、まだ理論の確立していない部分があるなどの場合は、200倍〜500倍の安全係数が採用されることもあります。
米国では子供やお年寄りなどのハイリスクグループに対しては、より厳しい安全係数を配慮すべきであるとの提案がなされています。日本でも、子供への影響を観察する試験を実施していますし、試験データに少しでも懸念があれば、300倍〜500倍の安全係数を用いています。